日本社会の疑問を考えるブログ

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日本人に「例外」という概念は危険だ

 日本人は、「例外」という概念を作ってしまえばそれが原則となり、結果それが害となることがある。ここでは、日本人が「例外」という概念を持つとどうなるかを考え、その危険性を指摘したい。

 

 

「例外」が「当たり前」になる

 見出しに書いたことがすべての理由である。初めは例外として運用していたものが、その「例外規定」を使うケースが増えていき、むしろ例外規定を使うときの方が原則ルールを適用するケースより多くなり、結果的に例外規定の適用が原則となってしまう。例外規定を設けるとその運用における適用条件の選定が正常にできないため、例外という概念そのものが危険であるといえるのである。まだ多様性を上昇させる方向や個々人が豊かになる方に進むのであればよいのであるが、そうでない方向に行くことがしばしばあるので問題である。

 これだけだと抽象的でわからないので、具体例を挙げよう。身近な例では、労働時間があるのではないだろうか。契約書には9:00-18:00(休憩1時間・実働時間8時間)などと始業時間・終業時間が明記されているにもかかわらず終業時間がいつの間にか守られなくなっている例や、工場などで使用する装置の原則外してはいけないはずの安全機構を外して使うことが当たり前となる例が挙げられる。

 

「原則」の成立条件がおかしい

 このように、例外規定とその条件を設けると、なぜか例外規定適用の方が原則となってしまう。その原因を考えると以下のようになる。ここでは、前項で例示した残業の常態化として、以下の記事

dennou-kurage.hatenablog.com

について、こちらに付されたはてなブックマークの、以下のような内容のコメントを用いて考える。

「閑散期に定時に終わるようにし、そうでないときはすべて残業で対応するのがよい」

 

「原則」の成立条件が「例外」となっている

 例から考えると、「閑散期」という状態自体が例外そのもの(いつも閑散期だったら事業が維持できないはず)であり、結果的に「定時帰宅可能日」自体が「例外」となってしまう。このように、「原則の対応ができる条件」(全部から例外規定を適用する条件を除けばよい)がそもそも存在しないか、あってもごくわずかとなるため、そもそも原則の規定が適用できなくなってしまうのである。また、今日やらなくてもよいタスクを持ってきたり、どうでもいい雑用を押し付ける輩がいるように、例外規定適用をさせようとする者がいるので、ますます原則となる条件が限られてしまう。

 

「原則」の成立条件が曖昧で、誰かのさじ加減で変わってしまう

 以上の例で考えれば、「閑散期」というものの定義が曖昧であることが原因である。「定義」というのは

「業務量的な定義」:現時点での受注業務数(未完了分)および、過去の実績や従業員数・従業員の時間当たり作業量から考えられる想定業務時間が一定値を下回っていること

「季節的な定義」:「業務量的な定義」および過去の実績から、どのような時期(例えば、毎年の決まった月)の業務量が一定値を下回るのか

がある。このように数値を用い厳密・客観的に定義した(もちろん、データの改ざんがないことを前提とする)のであれば問題ないのだが、このような定義がないため、各々(特に権力者や多数派)が恣意的に定義してしまう。

 

問題提起すれば論点をすり替えるか逆ギレする

 これは、奴隷根性(往々にして多数を占めた場合、その傾向は強くなる)を持つ者や権力者によくみられる態度である。具体的には

ステレオタイプの押しつけ:「社会人はそんなこと言うもんじゃないよ」というように、暗黙の了解を説くことで問題提起をあきらめさせる

気遣いの「フリ」:「俺だってそうならないように善処している」「こうなっているのも君たちのことを思ってのことだ」と、まるで例外規定を脱するよう努力したか、あるいはその例外規定自体が気遣いであるかのように見せる

「道連れ」思考:「だったらもっとひどくしてやる」と、文句を言うなら今文句を言っている状態がよかったと思えるくらいにしてやる、というもの

 とすることで、問題提起の行動が悪であるか、あるいはその行動を後悔させてやるため実力行使してやる、と言わんばかりの態度に出るのである。相手を支配したいためなのか、自分が拘束された状態が気持ちいいのか、改善策がないがそれを知られるとプライドが保てないのかは知らないが。

 

どうしても例外規定を設けたいなら…

 以上、日本人は例外という概念を適用する際の条件をうまく設定できないためそれを運用できないことがわかった。従って、日本人には「例外」という概念は早すぎる。しかし、どうしても例外を規定したいということがあるだろう。このようなときは、以下のような手順を踏むべきである。

①まず、例外規定を適用する際の条件となる、数値で記述できるものを定める。

②過去の実績から、その数値的条件の測定対象を抽出する。もちろん、そのデータが有利不利かにかかわらずすべて、改ざんすることなく抽出する。

③このデータを正規分布にフィッティングする。で、例外を適用する際は、今回の測定値が例外を適用する方向に、2σ以上振れている場合のみ例外規定を適用する。

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  残業の例に適用しよう。業務量に応じた関数である作業時間の過去の実績が1人当たり{10,20,15,13,17,23,19,33,25,30}時間であったとしよう。この時、平均値は21時間で標準偏差は7.3時間である。①の条件としては、「業務時間が一定以上」で「残業する」という例外規定を適用する、と定めるのが自然である。よって、業務時間(想定)が21+2×7.3≒36時間以上で残業する、という条件が作れ、これに満たないときは作業を明日に回したり、臨時職員を雇用したりするといった方法が考えられる。いずれにせよ、残業は悪であり完全になくすべきなのは言うまでもないが。