日本社会の疑問を考えるブログ

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日本とイタリアの鉄道を比較してみた

 先日まで、私はイタリアへ留学しており、複数回鉄道に乗車したが、イタリアの鉄道の方が日本のそれより優れていることがわかったので、それを述べる。

 

 

何よりも安い

 見出しの通り、イタリアの鉄道はとにかく安い。

 

 私は、ミラノ中央駅(Stazione Milano Centrale)からトレントまでTrenitaliaの特急電車・Frecciarossaを利用した。大体運行距離は230 kmであるのだが、これは東北新幹線の東京~郡山に相当する。さて、見出しの通りその値段を見てみよう。

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ミラノ中央駅トレント駅の合計料金(Frecciarossa #9721)。

 座席の並び方や材質で見れば、1等車ビジネスクラス(3行目)がグランクラスに、2等車プレミアム(9行目)がグリーン車に、2等車スタンダード(6行目)が普通車指定席に相当する。*1次に、東北新幹線の東京~郡山の料金も見てみよう。

グランクラス 14,110円(座席のみ。座席サービスを申し込めば16,200円)

グリーン車 10,960円

普通車指定席 8,340円

引用:東京-郡山の運賃と料金|JR新幹線ネット

   なんと、一番高い正規運賃(3列目)と比べてもイタリアは日本の半分から65%、グランクラスと1等車エグゼクティブ(2行目)を比べても2,000円以上安い。*2しかもこの料金は、正規運賃で比較した場合である。1,2列目の割引運賃*3を選択すればさらに安くなる。

 

 この割引運賃の便利さもお得なところである。日本の場合、割引運賃で予約することが難しい。有料会員登録や学生であるといった特殊なステータスを満たす必要があったり、一定期日前までの予約や特定の期間でなければその切符が発売されないか割引切符が利用できなかったりする。しかし、イタリアの場合、あらかじめ決められた座席数に達するまでは前日であろうとも予約が可能で、利用者可能日に制限はない。

 

 さらに、予約して乗車する際も手続きが簡単である。日本の鉄道の場合、自動改札がある都合上、駅に着いたら乗車券(場合によっては特急券も)を発券する必要があったり、乗車券代わりのICカードが必要だったり、Felica対応携帯電話が必要だったりする。しかし、イタリアではこのような手続きは必要ない。e-チケットがメールで届くのでダウンロードか印刷して見せればよい。

 

大都市圏の地下鉄の場合

 都市間列車は距離別運賃であるが、大都市圏の地下鉄などはそうではない。区間ごとに定められた共通運賃であり、切符を買えば乗り放題である。やはりこれもかなり安い。ミラノ地下鉄70分パスは、地下鉄のほかMi1-Mi3区間のバスや路面電車も乗り放題で2.00ユーロであった。

 

とても快適である点

 前項で、比較的安くハイグレードな座席に座れることを述べた。以下の写真を見てもわかるとおり、日本の列車に劣らない。

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前項で述べた1等車ビジネスクラス

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イタリア国内に乗り入れているスイス連邦鉄道(SBB)の車両の普通車。

 また、日本はサービスが行き届いているとかいうものの、案外そうでもない。車内サービスはほとんどない。せいぜいワゴンサービス(有料)が来るくらいである。しかし、イタリアの場合は、2等車であってもウェルカムドリンク(しかも2種類)とスナックが配られるし、空腹の場合は食堂車へ移動すればよい。それ以外にも、乗務員は非常に気さくな方ばかりだ。私が盗難防止のためスーツケースを自分の前に置いておいたら、「下にしまうところがあるのでお入れしましょうか」と声をかけてくれ、大きさの都合でそれができないことがわかると、広いスペースに案内してくれ、「ここをお使いください。盗難が不安なら、こちらにおかけいただいてもかまいません」と配慮していただいた。日本は基本的にそのような配慮がないどころか、そのような大荷物を置けるスペースがないこともしばしばある。それ以外にも、座席の種類によっては巨大駅に設置されたラウンジを使用することもできる(Frecciarounge, Italo Club)。

 

 さらに、騒音や揺れを考えてみても、何ら日本のものに劣らない。新幹線では、高速で走行すると気圧や騒音の関係で耳が痛くなることがあるが、同程度の速度で走行しているはずのイタリアではそのようなことは全くない。

 

普通列車の場合

 特急列車以外に割安で座席指定のない普通列車も走行している。イタリアの場合、大体このようなものである。

各駅停車:Regionale(R)*4

準急:RegioVeloce(RV)

急行:Regio Express(RE)

 これであっても「ロングシート」というものはない。日本の普通列車ではロングシートが一般的か、クロスシートがあってもごくわずかであるため、列車の加減速で体が横に大きく揺れ、不快なことこの上ないし、隣とぶつかってトラブルになることもある。しかし、イタリアでは普通列車であっても全席クロスシートが一般的である。ロングシートがあるのは大都市圏のごく短距離を運行する地下鉄くらいである。

 

混雑フリー

 基本、イタリアの鉄道は混雑しない。お盆や年末年始の帰省ラッシュで見られるように、座れないどころか新幹線や特急列車ですら通勤ラッシュ並みのすし詰め状態になっていることがある。しかしイタリアでは、座席指定のない普通列車であっても、基本的にどこかに座ることができる。

 

 一応大都市圏の地下鉄は混雑する。しかし、これはは運行範囲がごく限られた範囲であり、十分歩いていける距離である。もし混雑が嫌ならば地下鉄を使わずに自転車移動、なんてことも可能なのである。

 

遅延について

 よく日本の列車が称賛されることとして、「定時運行・時間に正確」ということがあり、それに対比される形で「海外の列車はよく遅延する」ということがある。確かに、イタリアの列車は遅延を前提に考えており、電光掲示板にも遅延時間の欄が用意されており、まれに45分遅延するなんてこともある。しかし、最近は遅延はほとんど起こっていない。

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4列目の10'とか5'とか書いてあるのが遅延時間である(単位:分)。

 以上を見る限り、ほとんど遅延している列車はなく、それによってほかの列車が影響を受けていることはないことがわかる。なお、遅延が起きると先についた列車からホームに入れていくため、出発番線が変わることがある。これを考慮して、電光掲示板では出発30分くらいまで出発番線が公表されないし、掲示時刻表に表記のホームに行っても列車の案内はない(掲示時刻表上の発車番線はあくまで目安)。

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このように、何も表示されていない。

 このため、ホームに出ず、全部の番線の列車を表示する電光掲示板を眺めておくのが最善策となる。

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 これについても特に問題はない。自称・時間にうるさい日本人が言うとおり、余裕をもって駅につき、よく確認すればよいだけの話だ。要するに、いつもは時間厳守だなんだと言っておいて鉄道会社には厳しく当たるのはお門違い、というわけだ。

 

 むしろ、日本の方が遅延に対する対策ができておらず、以下のような原因によって実際に遅延が多発・悪化しているといえる。

鉄道会社側の原因

複々線化もしていない低キャパシティの路線に、多数(場合によっては複数路線)の列車を詰め込む

・ほかの路線の影響を受けやすい。例えば、まったく関係のない路線の緊急無線で列車を止めたり、相互乗り入れを推し進めて遅延の影響を広げることになったり

・遅延時の対応。数十分(場合によっては1時間以上)遅れても当初の予定通りのダイヤを厳密に適用するか、5分だけの遅延で一部列車を運休にするかの対応しかできていない

 

それ以外の原因

・東京一極集中。このため客が低キャパシティの都市部路線に密集する

・乗務員や他の客ににケンカを売る馬鹿な客の存在(ストレス社会が原因か?)

・体調不良時に休養を許さない会社、社会の存在。このため車内での急病人が毎日のように発生し、やはり遅延の原因に

 

結局イタリアの方が優れているな

 イタリアの鉄道は日本より優れている。日本の鉄道の勝ち目なしだ。あれほど日本の鉄道は世界一だなんだといわれてきたにもかかわらず、ここまでイタリアの鉄道に劣っていては見る目もない。ただ虚しい自慢にしか聞こえない。

*1:イタリアの鉄道では、特急列車に「自由席」「座席未指定券」という概念は存在しない。全ての券に座席が指定される。

*2:為替の影響を考えると、アベノミクスのせいで大幅な円安となった2014年12月の1ユーロ約150円の場合は、1,000円程度エグゼクティブクラスの料金がグランクラスの料金を上回る。しかし、他のクラスは安いままである。

*3:変更、返金に制約が出てくるだけで、サービスが劣るわけではない。

*4:ミラノ中央駅およびミラノ・カドルナ駅を起点とするマルペンサ空港行き速達列車「マルペンサ・エクスプレス」も予約サイト上はこれに含まれる。